人事録

人事の仕事に興味がある方に向けた情報サイト

インターンシップ制度への注目

インターンシップとは?

就職をする前に、実際にその企業で働けるのがインターンシップです。
2015年度卒業予定の、現在の大学3年生から就職活動開始時期が変更され、3月1日からとなりました。
開始時期を変更したのは、大学の本来の目的である勉強時間を確保するためや、近年減少している留学を促すためなどが挙げられていますが、インターンシップの実施も理由の1つです。

昨年度に内閣府が実施したアンケート調査から、企業と人材とのマッチングの高さは、企業に対する理解の深さに比例することがわかりました。
このため、インターンシップによる企業での就業体験を通じて、自分がその会社に向いているのかどうかを判断する機会を得てほしいと期待しているのです。
政府は大学の1年生であっても、興味のある会社のインターンシップに積極的に参加して、さまざまな職場を体験してほしいと呼びかけています。

実際に、2014年でまではインターンシップを実施する企業は28%程度でしたが、今年度に入って実施企業は43%に急増していおり、インターンシップは企業にも学生からも好評を得ています。

日本のインターンシップは世界標準ではない

日本ではまだなじみの薄いインターンシップ制度ですが、アメリカなど海外では盛んに行われています。
しかし、日本のインターンシップはアメリカなどの海外のインターンシップとは内容が異なるのです。

アメリカなどではインターンシップの期間は2カ月~3カ月の長期間にわたって行うのが一般的で、給料も支払われますから社員に近い立場で働きます。
企業が学生の働きぶりを見て採用を望めば、そのまま就職することも可能です。

しかして日本ではインターンシップの期間は長くて3週間、短い場合は1日で終わります。
日本で行われているインターンシップは、海外ではエクスターンシップと呼ばれる制度と非常に似ています。
日本のインターンシップとエクスターンシップが異なる点は、日本では就活生が対象であるのに対し、エクスターンシップでは主に1年生と2年生が対象であることくらいです。
つまり日本では、社員に近い立場で本格的に働くのではなく、見学者・お客さんといった立場でプチ体験をすることをインターンシップと呼んでいるのです。

インターンシップの内容もピンからキリまでで、日本ではインターンシップがまだ本格化しているとはいえないのが現状です。
単に説明会で企業ピーアールだけを行うところもあれば、ロールプレイングによる実習や、実際に業務を体験させるところまで、プログラムの充実度に濃淡があります。

インターンシップとは会社と学生のリトマス試験紙

しかし、日本のインターンシップにも長所はあります。
日本のインターンシップは実施期間が1日など短い場合が多いため、いくつもの会社を体験できることです。
複数の企業を比べることで、より自分に合った企業を選択でき、就職してから社風が合わないと悩むリスクが減らせます。
しかし、この長所を生かすためには、会社側がインターンシップで何をするのか、そしてその目的は何であるのかといった具体的なプログラムを、事前に学生に知らせることが大切です。

高卒内定率がバブル期並みまで回復

高校生の就職内定状況

2015年2月16日、文部科学省がこの春に卒業予定の高校生を対象に行った、就職内定状況の調査結果を公表しました。

(参考サイト)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/02/1355107.htm

調査結果によると業予定者の数は約107万2,000人で、このうち就職希望者は約19万1,000人、就職内定者は約 17万人です。
就職内定率は前年比3.5ポイント増の、88.8%となりました。
内定率は5年連続で上昇傾向を維持しており、バブルで好景気だった1988年の89.8%と同レベルにまで回復しています。

内定者を男女別に見ると男子は90.7%、女子は85.9%。男子は昨年より2.7ポイント、女子は4.4ポイント上昇しました。

学科別では、工業が最高で96.0%。
次いで看護の92.6%、福祉の92.1%、水産の92.0%、農業の914%、 商業91.2%と続きます。
最も低かったのは普通科で、84.7%とでした。

大都市圏の就職率が低下

内定率を都道府県別に見ると、最も高かったのが富山県の96.9%。
次いで石川県の95.5%、 岩手県の95.3%、秋田県の95.1%、福島県95.0%と続きました。

一方で、就職内定率が最も低かったのは沖縄県の63.2%です。
次いで大阪府の81.3%、 神奈川県の82.5%、北海道の82.6%、東京都の83.3%と、大都市圏での就職率の低さが目立ちました。

東日本大震災で被害が大きかった岩手県は前年同期比1.5ポイント増の95.3%。
宮城県は2.8ポイント増の90.0%、福島県 2.4ポイントの95.0%でした。

この調査は国立、公立、私立の高等学校を対象に、学科別、都道府県別の就職状況に調査したもので、調査結果は2014年12月末時点のものです。

昭和51年以降の調査結果を見ると、これまでで12月時点の就職率が最も高かったのは、バブル絶頂期だった平成元年の91.6%。
最も低かったのは平成14年の66.3%でした。

就職内定率の回復は景気の回復を表していますから、5年連続で内定率が上昇しており、好景気の頃と同水準となったのは明るいニュースです。

また工業、看護、福祉で就職内定率が高かったのは、建築分野、高齢者医療・福祉分野の極端な人材不足を反映しています。

大学生の就職内定状況

大学卒業予定者の就職内定状況を見ると、大学、短期大学、高等専門学校卒を合わせた就職内定率は79.2%で、前年同期比3.2ポイント増でした。

大学だけに限定すると、前年同期比3.7ポイント増の80.3%。
このうち国公立大学は2.8ポイント増の84.5%、私立大学は3.9ポイント増の78.9%となっています。
地域別では、関東地区が最も高く85.6%でした。

男女別にみると、男子の前年同期比2.7ポイントプラスの就職内定率78.9%。
女子は前年同期比4.7ポイント伸び、81.9%です。
国公立大学の男子は82.5%、女子は86.8%でした。
一方、私立大学の男子は77.8%、女子は80.3%となっています。

文系・理系別でみると、文系は前年同期比4.6ポイントプラスの79.4%。
しかし、理系は前年同期比0.8ポイント減少し、84.2%でした。
地域別では、関東地区の就職内定率が最も高く85.6%となっています。

健康食品表示に新制度

食品の健康効果の表示が可能に

消費者庁は3月2日、機能性表示食品制度のガイドラインを公表しました。
今夏にも新制度として導入される予定です。
機能性表示食品制度とは、その食品がどのように体に良いのかを表示できる制度で、表示内容に企業が責任を持つというものです。

新たな制度では商品のパーケージのよく見える場所に機能性表示食品と明示され、含まれる成分と健康上の効果を表示できます。
たとえば、○○という成分を含み胃腸の働きを整える機能があると報告されていますなど、その商品を食べれば健康効果が期待できると伝えられるのです。

これまで食品表示の規制は厳しく、食品業界側ではもっと訴求効果の高い表現で商品をアピールしたいという強い要望がありました。
現制度では、若返り効果がありますなど一定の効果を強調するような表記は禁止されているからです。

第3の表記制度

食品の機能表示には、トクホと呼ばれる特定保健用食品と栄養機能食品があり、今回の新制度は3番目の表記制度となります。

購入した食品にどのような健康効果があるのかは、消費者にとって気になる情報です。
○○に効果があると表記できれば購入意欲が一気に高まり売上も上がりますから、新表示制度は大きなビジネスチャンスだといえます。
そこでアベノミクスの戦略の1つとして、第3の表記制度である機能性表示食品制度の設置が検討されてきたのです。
このほど検討結果がまとまり、実用化が目前に迫ってきました。

売り上げを取るか? 消費者の健康をとるか?

トクホは国がその効果と効果を表示する内容を審査し、審査に通らなければ許可されませんが、今回の機能性表示食品制度は、発売の2カ月前に消費者庁に健康効果を申請すればよいので、時間をかけずに商品化できるのが眼点です。

また、対象食品もサプリメントや加工食品にかぎらず、くだものや野菜などの生鮮食品にも適用されるようになりました。
これによって農作物の売上アップを期待する声も高まっています。
しかし一方で、国が責任を持たず、企業だけに責任を負わせる制度では消費者の安全が守れないと指摘する声も出ています。

この制度はアメリカの表示制度をモデルにしたものですが、アメリカでは効果の根拠を公開する義務がないため、本当に効果があるのか不審な食品もあります。
表示を信じて購入した消費者が被害にあって、死亡したこともありました。

この点を踏まえて、日本の制度では科学的根拠を証明しなければ表示は認めらないとする方針です。
また、制度がスタートした後は市場を調査し、健康効果や安全性に疑問がある商品は、表示の撤回を求める場合がある決めました。

経済的効果と消費者の安全確保のバランスが取れるかどうかが、新制度導入の成功のカギとなると考えられており、企業側からは表示の規制が厳しすぎるとの声も出ています。
また、安易な効果表示は誤解を招きやすいため、消費者からのクレームの原因となることも考えられます。